「Princess Brave!」(KOTOKO)

まあ、普通に聴いていてこれは超ヤバい曲だ、と感じるような作品な訳ですが。
「Bride!」の歌詞中では彼氏役(=「My Prince」)の特徴が一切描写されていない、せいぜい「背伸びする」からPrincessよりも背が高いだろうなあとか、「彼の部屋の前」だから男性だなあとか、その程度だったのでした。
「恋愛の不可能性について」じゃないけれど、ある人を愛するときに、その理由を挙げることができるならばそれは根本的に愛ではない、とかいう話があって(有名百合テンプレ「貴女の顔が好きなの」とかもそこからの派生ですね)、ということは、《運命の恋》という概念は相手に一切依存しないものになる、というのは論理的帰結ですね、と。
で、さらに、「Brave!」においては、恋の相手は一切歌詞中に現れない。「愛さがす旅」の果てに見つけたのは「願い叶うKiss」であって彼氏ではなく、《Love》は相手の存在にまったく依存していない。
女の子の誇り高さ、を描こうとすると、窮極的には男の子を必要としなくなる、ということなのかしら。「恋に恋する」という言い回し(発明した人は天才だと思う)こそ恋の最も美しい姿なのだ(→そして、美しいことは強いことと同義である)、というのが1つの理屈として立つことを考えれば、自然ではあるなあ。ここまできっかり作りこむのはやっぱり凄いけど。
この極端さをその毒々しい声で謳い上げるKOTOKOは偉いとも。


……だからこういうこと書くなら少女漫画一通り読めって自分。


歌詞について。
・「剣士に負けぬ剣さばき」は「剣」が重なっていて言葉捌きがいまいち。
・「光を妬む魔女」=「絶望の魔女」の「心臓貫く」というのに、なんかこの唄のヤバさというか危険さというかが現れている。一番単純なレヴェルでは、悪い奴をぶっ殺すという話は倫理的に危ない、という話なんだけれど。単純にすばらしいというだけでなくて、そこらへんの危険な感じをちゃんとKOTOKOは反映している(逆?)。もうちょっといくと、百合のテンプレで「お姫様と結ばれる魔女」というのがあって、魔女=科学という繋がりまで見据えなきゃ? まあいいや。
・「閉じかけたGate ほんの少しPray 暗きGrave駆け抜けて」は漫画的に絵が浮かんで良い。
・2番サビ後の「Yeah!」と、「恋する少女を〜」のところの「Ah!」がステキ。こういうキッチュさにこそ美しいものは宿っていたりするんだと思う。
・「お仕着せのFate 諦めちゃSlave」と「恋する少女を世界はきっと待ってる」の2センテンスは単語のチョイスに強度があってよい。


あと、「Brave!」は理論上百合でも成立する(相手がいないから)けれど、そういう風に解釈できないように思えるのは何故か?
ちょっと考えれば理由は挙げられそうだけれど(例えば、百合は関係性を描くので単体で最強無敵な存在が出てきたら困る、とか)、多分そうやって挙げられた理由というのは嘘で、本当は無理でもなんでもない。ただ、前提が不足しているだけなのです、きっと。
つまり、2次創作なら可能です。例えばよしのんに独自解釈(=作者の実存)が加われば、それは「Brave!」になりうるはずです。そのような類の前提を共有することが、残念ながらこの曲では望めなかっただけではないでしょうか。
今の百合に求められるのは、前提を共有するまでに持っていくテクニックだと考えていたりするのですが、それについてはまたいつか。