「コミック百合姫」Vol.11

実は百合姫を購入するのは初めてだったりする。百合姉妹も知人に少し借りて読んだことしかない。
ので、特に連載作品については読み違いがあるかもしれない、とあらかじめ。

「Sweet Peach! ―スイートピー!―」(水野透子+千手ちゆ)

カラーページの色使いが異常だと思う。1つだけ指摘するならば、全く主人公がトイレに座っているように見えない。面白いので、たまに見る分にはいいけれど。
物語のほうは……こういう出だしって、全くわくわくしないのですが。

「ときめき☆もののけ女学園」(南国ばなな)

二口女の後ろの口に萌えるのは流石に厳しすぎる……。
てか、「もののけ女学園」という設定の時点で負けじゃないかなコレ。つまらんだろ。

ストロベリーシェイクSweet」(林家志弦

林家志弦の漫画をまともに読んだのはこれがほぼ初めてなので確証は持てないが、「よい意味で大味」な部分をカタルシスに使用する作家なのかな、と思った。全ての百合作家が玄鉄絢のような作品を書いている世界はそれなんてディストピア状態なので、そういうのを開拓している作家なのだとしたら頑張ってほしいなぁと思う。予断かもしれない。
ペンシルパズルでいうと、モチコロっぽい。周りの4マスしか決めない黒マスではなく、一気に周囲の壁を決めるブロック。それでいて、四角に切れほど軽くなく。

「紅蓮紀」(武若丸

悪い意味で古めかしい。てか、あまりに辛くて途中で読むのを断念してしまった。

「だいすき」(花津やや)

「獣に変身してしまう」という設定は、百合としての純度を下げている。「本能より理性の方がずっとヤバい」という考えは、恐らく、現代の百合ジャンル作品の根幹をなしている。その、まさに純度の一番低いところで勝負をしているので、百合を期待していた身からすると、なんだかなあ。
そしてそれゆえ、全体に、「リアル」という言葉の胡散臭さに近いものを感じた。少年がホストになってエイズに感染したり、少女がいじめられて拒食症になったりするお話が「リアル」と称されるのは勿論納得がいかないが、その根本的な原因は、文体が稚拙だとか自分の経験と一致しないとかではなく、作品において提示される人間観が納得できないからだ。この作品における人間像も同様に、納得がいかない。
具体的に言えば、恵の行動は、そんなに大層なものではないのだが、作品の中では大層であるかのように扱われている、ということ。「美しい犠牲に感動する作品というのがそもそも思想的に問題がある」という議論以前に、美しいことでもなければ、大したことでもない。人間というのは、きっと、もっとヤバい。

アオイシロ ―青い城の円舞曲―」(原作:麓川智之、漫画:江戸屋ぽち

「世の中にはツキのある人とそうでない人がいて」「どちらかと言えば」「私は 後者に分類される」――という、出だしの気取り具合が面白かった。
最終回だけ読んでもよく分からない話なので内容については差し控えることに。

「クローバー」(乙ひより)

ちゃんと計算どおりに全て作られていて、素直に上手いなあ、と思う。流れが自然で、瑕も殆ど見えない。
ただ、それ以上の圧倒的なものの予感が感じられない。多分、作者は僕と志向するところが違うのだろうけれども、少し残念。

「魔女」(CHI-RAN

うーん、蠱惑的とか、耽美とか、そういう形容詞を持ち込むのはどうもなぁ……。
ひょっとしたら設定的には見るべきところがあるのかもしれないけれども、思想的にはやっぱり敵。

「ラブレター」(袴田めら

百合姫Sの、あらきかなおの短編を思い出した。
持っていきかたが強引過ぎると感じて、あんまりこの作品自体は好きになれなかった。あまりに洗練されていない。
ただ、この強引さは袴田めらの持つ可能性のようにも思えて、そこらへん、「クローバー」とはちょうど逆。


小冊子のPetit百合姫も読んだ。全体にレヴェルが高くてすばらしい。
「初詣シンドローム」(かずまこを)、「IMAGE CHANGE」(速瀬羽柴)が特によかったと思う。どちらも(特に前者は)元の作品を読んでいないのが残念。
ちなみに一番酷かったのは「Q&A」(CHI-RAN)。マイノリティが自らアパルトヘイトを推進するなんて、どこまで権力者に都合がいいのやら。