「まんがタイムきららCarat」9月号

ちょっと文体変かも。

ひだまりスケッチ」(蒼樹うめ

えっちなお姉さんぶってる吉野屋先生は、自分が性的な存在としてまなざされることについてどう考えているのか。というのをSSにすると面白いと思います。
自意識過剰なキャラ、大好き。

「ラジオでGO!」(なぐも。)

きららにも就職している人を描いている4コマは幾つかあるが、大抵は"仕事"をしているようには見えない。教師はみんなテキトウだし(「教艦ASTRO」だって、"仕事"をしているかどうかといえば違うだろう)、エロゲメーカや漫画家だって、個人主義か頭おかしいかのどちらかだ。そんな中、この作品は、一貫して"仕事"を描いている。
僕は、泊り込んでのギリギリの準備や、仕事が終わったあとの飲み会や、クライアントとの妥協点のすり合わせのようなものを、心から憎悪している。「社会的な活動」という言葉をそういったものだけに用いることを止め、"仕事"の存在を自明視しなくなれば、世界はより良くなると信じている。
よってこの作品は敵と看做さざるを得ない。
……とはいえ、萌え4コマの先鋭化がどこまで続くか分からない以上、こういった作品が一定数あることは不可欠というのも、間違いない訳で。まあ、そんな感じ。

「うらバン! 〜浦和泉高等学校吹奏楽部〜」(都桜和)

部活4コマにおける顧問問題をテンプレどおりに手堅くこなした。このテンプレを確立させたことはここ3年ほどのきららの大きな功績ですね。
しかしこんなテンションの高いキャラを(しかも顧問という立場で)登場させて、漫画のノリが変わる気がするのは大丈夫なのかしら。

「空の下屋根の中」(双見酔

人間は、働くことを当たり前のように考えているので、働くとはどういうことなのかを時々忘れる。あまり働きたくない人間が働こうとしたときに、働くことの内容を本当に初歩的な部分から整理すると、「殆どの人間がとてつもないことをしている」という事実を彼/彼女は発見する。「脳内でシミュレートしたら仕事だけで1日が終わった」とかは分かりやすい例で。
この作品は、本当に基礎的な部分から、働くことの同意を積み上げようとしている。だって「もし、やりたいことがあるんだったら、それをやってもいいかな」「もし、他の条件をすべて忘れて、お金だけについて考えてみれば、ないよりはあったほうがいいよね」というレヴェルから始まるんですよ! 本当に自明な部分から始めて、共有できる部分を段々に増やしていく、というカウンセリングチックな議論の進め方に、リアルを感じまくりです。働きたくない人にとってはまずそこから始めないといけないというのは、本当に本当なのです。
そして、ここがポイントなのだけれど、結局のところ「1つ1つ共有できる部分を増やしていく」とかしたところで、働こうと考えるようになる訳なんてない。ありえない。だって、「寝ながら仕事」とか言い出さないとやってけないようなことを、どうしたら肯定できるというのだろう? 周りの状況(親の圧力、経済的な限界)に逆らえなくなるか、「意外とどうにかなるものだよ」「だってみんなやってるし」といった洗脳(=極めて巨大な飛躍のある理屈)を受けるか。働き出す理由なんてそれくらいしかない。

つまり、それらが排除されたこの世界において、彼女は働き出すことが出来ない。共有できる部分を増やそうとは試みながら、決して「働いてもいいかも」という地点に到達することは出来ず、その遥か手前に収束する点列を描くことになる。
……もしかして、扱っている問題としては、ニート漫画というよりは留年漫画なのかな?

「スリースリープ」(宮賀暦)

ああどこにでもある普通の萌え4コマですね、とか考えるのは間違っていて、この作品は萌え4コマの限界点に挑んでいる。
まずタイトル。「"スリー"スリープ」は、新キャラを入部させることはできない。萌え4コマは(古くは「あずまんが大王」の4巻から)常に新しい関係の構築と古い関係のフェードアウトに極めて意識的だった。初手から「新キャラは入部させない」と宣言するこの作品は、この問題についてかなり極端な立場を表明している。
そして部活の内容。萌え4コマは、それまでの「内容」を廃し、女の子の「どうでもいい会話」「だらだら」を描くことで特徴付けることが出来(あるいは、一般にはそういわれており)、実際近年のきららにおいては、ゆとりがゆとって遊んでいることを描く作品がかなり多くを占めている。しかし実は、ここにはパラドクスが存在する。だらだらを限界まで突き詰めると、昼寝というコミュニケーション不能状態に行き着いてしまうのだ。部活動として「昼寝部」を考えた作者は、部活4コマの本質と矛盾を、よく把握している。
多分作者はそんなこと意識していないのだろうが、ここまでクリティカルな作品となると、期待しない訳には。
正面から完全撃破するのか、萌え4コマが積み重ねてきた各種テクニックで華麗に問題をすり抜けていくのか、それとも全くお話にならない駄目駄目な作品になるのか? まあその前に連載にならないと、か。

「まっしろ天使」(たぬきまくら)

絵もキャラも魅せ方もめちゃくちゃだが、応援したくなる。
「めちゃくちゃ」が全て「駄目」ではない、ということの例証になってますね。

「エジプト天使パトラちゃん」(西野彦二)

「どうにも展開しがたい設定を第1話でつける→早々とその設定を放置し、よく分からない会話とノリで魅せる4コマになる」という最近のきららでよくあるパターンを、また1つの作品が見せました。エジプト全く関係ねぇ。